・生産技術で内定もらったけど、具体的に何をする仕事なんだろう?
・生産技術って負け組って聞くけど、実際どうなの?
・生産技術で自分はやっていけるのかな?
こんな悩みを皆さんお持ちではないでしょうか?
■本記事の内容
- 生産技術とは
- 生産技術の将来性
- 生産技術を選んで良いのか
■本記事の作者(こんな人が書いてます)
自動車部品工場で生産技術職を15年担当している筆者がリアルを解説します。
最近は生産技術の枠を超えて工場全体を多岐に渡ってリードさせてもらっています。
今回のテーマに対して、私の結論は「決して負け組ではない!けど大変!」です。
理由は以下の記事を読んでいただければ納得できると思います。
仕事は人生の大事な選択ですが、事前に正しく理解する事は難しい場合が多いです。
このブログでは生産技術に入ったらどんな仕事をしていくのか分かりますし、
企業サイトなどとは違う現役生産技術者のリアルな情報になりますので、お役に立てるはずです!
生産技術とは
生産技術は工場の製造現場を効率よく運営できるようにする仕事です。
その内容は多岐に渡りますが、若手、中堅、ベテランで仕事内容が変化してきます。
この記事では、最も大事な若手時代について書いていきますね!
若手時代の仕事内容
生産技術の基礎を作り上げ、忙しくも色々な事を吸収していく時代です。
主な仕事内容は以下の通りです。
若手時代の仕事(入社3年目まで想定)
①不良低減 : 不良品を作らない
②稼働率向上 : 装置を停止させない
③サイクルタイム向上 : 製品を短い時間で作る
④現場との関係性構築 : 現場のおじさん達と仲良くなる ←これ一番大事
生産技術の基本的な知識を付けていくのはもちろんですが、現場に足繫く通っておじさん達と話をする事でマネジメント能力が養われていきます。
これから生産技術で働こうとしている方は、現場へ散歩に行っておじさん達と話してください!
その後の仕事のやり易さが格段に変わってきます!
それにおじさん達との会話、けっこう楽しくてリフレッシュされますよ 笑
では仕事内容について、詳細をお話しさせていただきますね。
不良低減
生産に失敗して捨てる製品を少なくしよう!という活動です。
具体的には計測データの分析や製品状態の観察から、不良原因を導き出します。
不良原因をFTA解析等を用いて探し出します。
その為にも加工条件・検査条件などの原理原則に則った知識が必要になります。
また色々な不良が発生しているので、どれを改善すべきかパレート図などから抽出も必要です。
稼働率向上
停止する時間を少なくして、同じ時間でもたくさん作れるようにしよう!という活動
様々な停止時間を改善し、生産時間に占める稼働時間を増やす活動です。
具体的には以下の計算で算出します。
稼働率=(生産時間ー停止時間)÷生産時間×100%
生産時間8時間、停止時間1時間の場合は、計算すると87.5%の稼働率となりますね。
停止時間の代表格と言えば、段取りと呼ばれる装置の刃具等を交換する時間があります。
内段取り:装置を止めて交換する。特別な装置にしなくて良いのでイニシャルは安価
外段取り:装置を止めずに交換する。特別な装置にする必要がありイニシャルは高い
この辺は語ると長くなるので、またの機会に詳しく説明しますね。
サイクルタイム向上
ラインサイクルタイムを速くする為に、
ボトルネック工程を改善して1個作る時間を短くしよう!という活動。
サイクルタイムというのは、ある工程で製品を1個生産する為の時間です。
ですが何かを生産する際に1工程で完成する事はあまりないですよね。
その為、生産ラインでは最もサイクルタイムが遅い工程(ボトルネック)を基準として、
ラインサイクルタイムという時間を採用している事が多いです。
偉い人が「ここのサイクルタイムは何秒だ?」と聞いてきた時は、ほぼラインサイクルタイムの事だと思って良いでしょう。
現場との関係性構築
生産現場でいっぱい話して、おじさん達と仲良くなろう! ←これ一番大事
おざます!最近ラインの調子どうっすか?
おう!ぼちぼちだぞ。でも最近このロボット、たまに製品を掴みそこねるんだよなぁ。
マジすか。昔は出てなかったのに、最近発生するってことっすか?
そう、昔はねぇな。3日前くらいからかな。まぁ1日数回なんだけど。
上記のような仕事の話から他愛のない話まで色々話してください!
そして悩みを解決する事ができれば信頼関係に繋がります。
その積み重ねが「お前が言うなら仕方ねぇな」とおじさん達が色々な協力をしてくれるようになってきます。
そうなるとたくさんの人から自分が調べなくても色んな情報が得られるようになり、ドンドン仕事がやり易くなってきて成果もあがります。
でも信じすぎは注意!現場の人は感覚でモノを言ってくるので、自分も何度もはめられました 笑
必ず自分で現地現物の確認はしましょう!
ここで何となくピンときた方もいるかもしれないですが、
生産技術で最も必要な能力は、コミュニケーション能力と人を動かす力なんです。
これは簡単に言うと、マネジメント能力です。
またおじさん達が話してくる事は、常に現場で働いているからこそ本質的な事が多いです。
理解というよりは感じている。という表現がしっくりきます。
自分より何十倍とその現場で働いているのですから、普通に考えれば当然ですよね。
よく現場はバカばっかりだ!なんて耳にしますが、そんな人ほど現場を見れていない事が多いと思いますし、コミュニケーションがとれていないから、現場から反対されてしまう方が多いです。
中堅時代、ベテラン時代では、装置の導入や新設ラインの立ち上げなど工程設計が本格的になってきます。今後記事にまとめていきたいと思います。
必要なスキル
■生産技術に必要なスキル
①工程能力調査で必要になる統計学
②検査工程で必要になるプログラミングスキル
③装置などを制御するPLCの操作
④MSオフィス系の基本的な操作
⑤品質管理で使えるQC検定 ※私は持ってませんが・・・
⑥基本的なITスキル ※ITパスポート程度で問題ないです
上記のように書かせて頂きましたが、若手の生産技術に特別必要なスキルはありません!
高卒程度の学力、諦めない心、論理的思考があればどんな方でも活躍可能です。
個人的には論理的思考が大事だと思いますので、情報系を専攻されている方やプログラミングが得意という方であれば、ITスキル・論理的思考を持ち合わせているので最適かなと思います。
※但しコミュニケーション能力がないと大変かなと思います。
生産技術の将来性
仕事内容はどうだったでしょうか?
ここからは生産技術の将来性を解説していきますね。
給料
生産技術は技術職での採用となる会社が多いです。
そのため設計などの技術職と同様なので、基本給は高い傾向です。
もちろん企業によって大きく変わってくるかと思いますが、
求人ボックス給料ナビによると、生産技術の平均年収は458万円となっています。
日本の平均年収が441万円となっていますので、少しだけ高いという程度ですね。
私は正直言うと、実際はもう少し高いのでは?と思っています。
というのも生産技術は残業が多い職種ですので、
私は新入社員の時から年収400万円程度ありました。
私の年収は以下の感じでした(年間残業450~600時間くらいでしたが・・・)
会社や昇進具合によっても変わるので、あくまで参考程度で。
- 23歳:約400万円(基本給:20万円)
- 26歳:約500万円(基本給:25万円)
- 30歳:約600万円(基本給:30万円)
- 35歳:約700万円(基本給:35万円)
昇進
技術職には研究や設計も含まれていますが、
生産技術への配属人数は少なく昇進しやすいと言えるでしょう。
また生産技術は経営視点やマネジメント能力が養われていくので、
製造部長・工場長などは生産技術出身者が多いのも特徴です。
モノづくりが主体である製造会社に就職した場合は、社長になれる可能性もあります。
モノづくりの会社で生産技術出身の社長は次の通りです。
日本のモノづくりで有名な企業の社長は生産技術出身が多い
- トヨタ自動車の豊田章男
- ソニーの平井一夫
- シャープの江崎玲於奈
- ユニクロの柳井正
日本でなければ、アップルのティム・クックなどもそうですね。
生産技術を選んで良いか
他の技術職と比べた時のメリット・デメリット
メリット
- 改善が形になり目に見える効果となるので、達成感を感じやすい
- 第一線で活躍し続ける事ができる
- 会社の売上への貢献度が高く、やりがいを感じやすい
- 常に新しい事へ挑戦できる
デメリット
- 休日出勤、残業が多くハードワークである
- 現場と経営陣の板挟みになりやすい
- 自分より詳しい人がいなく、常にプレッシャーを感じる
- 生産ラインは昼夜稼働しているため、問題があれば夜中に連絡がくる
良くも悪くも仕事中心の生活になる事は間違いありません。
仕事に対する個人の価値観の違いから、このあたりが負け組と言われるところです。
ワークライフバランスをどう考えるか
生産技術は間違いなくワーク側に偏ります。
私は若い時に結婚したのですが、いつも夜中に帰る生活が続いていました。
多い時は年間600時間ほど残業をする事もありました。
もちろんそうなると以下のような辛さが伴い、精神的に追い込まれます。
- 妻が不機嫌になる
- 子供と一言も話せなかった
- 家事・子育てを任せきりになってしまい申し訳なく感じる
- 起きる→仕事→寝る→起きるのループ
- 土曜日はほとんど活動できない(疲れているので休息日)
- 休日・長期休暇の出勤が多く、家族でお出かけができない
仕事が大変!つらい!というよりも、家族への申し訳なさの方が精神的にきます。
(少なくても私はそうでした・・・)
そうなると体も心も休まる時がなく、
自分は何のために仕事をしているんだ?と追い込まれてきます。
独身であれば乗り切れるかもしれませんが、
結婚している場合は正直おススメしない職種です。
向いている人・向いてない人
向いている人
- 独身
- 人に喜ばれるのが好き
- コミュニケーション能力が高い
- 多角的な視野を持っている
- 新しいことが好き
- 諦めない人
向いていない人
- 結婚している
- 何かに没頭してしまう(1人で黙々と仕事したい)
- 取り仕切るのが苦手な人
- 趣味がいっぱいある(プライベート重視な人)
- 仕事はあくまでお金を稼ぐ手段と思っている
- 定時で帰りたい
私の体験としては、30代半ばまで結婚するつもりがない方、プライベートを犠牲にしてもバリバリ仕事をして稼ぎたい方であれば生産技術をおすすめします。
プライベートを充実させたい!と思うのであれば、他の職種を選ぶべきしょう。
まとめ
生産技術が負け組と言われる理由は、ハードワークでプライベートが犠牲になってしまう。というのが大きいでしょう。ですがこれは個人の価値観の違いとも言えます。
生産現場は常に稼働しておりトラブルがあれば、生産性を悪化させないようにすぐに対応しなくてはいけない。 そうなれば昼夜、休日関係なく連絡が来ます。
更に現場の装置を改造したいとなると、
当然ですが休日・長期休暇など生産していないときになります。
(私は入社から5年くらいは長期休暇をまともに休めた事はありませんでした)
1・2年すると自分より詳しい人がいなくなってしまい、
意見を求められたり決断を迫られるというプレッシャーとの戦いにもなります。
でもそれだけ工場を運営しているという実感が湧き、自分の行動が生産現場の実力に直結する仕事とも言えます。
生産技術は決して負け組ではありません。
負け組と感じるのは個人の価値観の違いだけであり、
社内での地位を確立する・社会人としての価値を高めるには生産技術は有利な職種です。
但しプライベートとの両立は難しいので、慎重に判断すべきでしょう。
私は過去に何度も生産技術を辞めたいと思いましたが、
前向きな姿勢や調整力、多角的な視点などが評価され、
新工場設立リーダーや物流の自動機器導入など結果的に色々な事に挑戦させてもらえました。
その経験から今は経営側に立ちたいという気持ちが強くなり、妻の個人事業主を影ながらサポートして起業や経営とはどういものなのか?を体験しています。
起業については後日お話しさせて頂きますね。
生産技術に特別な才能やスキルは必要ありません。
必要なのは諦めない心とみんなに喜んでもらいたい。という気持ちです!
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